連続インタビュー 小泉“経済無策”を突く!(4)

自民・既得権益集団と経済破綻を共にするのか
週刊エコノミスト 9月9日号 平成15年9月1日(月曜日)
10月に民主党と合併をする自由党の小沢一郎党首。自民党は、既得権益層を守ることに汲々とし、小泉「改革」は口先だけにすぎない、と一刀両断。

自由党党首 小沢 一郎
聞き手・小林 剛(本誌編集委員)

財政出動は否定しない

――株価が上昇して、今は一見、小泉政権の経済政策が功を奏しているように見える。今の経済状況をどう判断する。

株価は上昇しても、ファンダメンタルズ(経済の基本的な前提)はいい方向に変わったわけではないし、日本の経済と社会の構造は何も変わっていない。何も改革されていないということだ。株価が上昇しているのは、もともと金融緩和でカネがジャブジャブのうえ、不景気で資金需要が足りないから国債を買っていたマネーが、株式市場に向かっているだけだ。景気が本格回復したわけではなく、ヘッジファンドなど外国人投資家が割安な日本株を買ったのが、相場を盛り上げただけだ。

それは米国経済も同様だ。米国では10年間好景気が続き、個人や企業にそれなりの蓄積があるが、回復したというのはウソだ。毎月4000億円とも言われる膨大なイラク戦費の負担があるし、黒字だった財政収支も赤字に転じて史上最高に膨らんだ。経常赤字も年間5000億ドルベースに高まってきた。対米輸出に期待をかけて日本の景気回復を描くのは、絵に描いた餅だ。

8月の月例経済報告が上方修正されたが、これも過大評価だと思っている。日本経済は、高度経済成長の蓄積があるが、このまま続けば、ダッチロールしながら、墜落してしまうだろう。

――自由党は、「構造改革」「規制緩和」を口にする点で、小泉首相と方向が似ている。

まったく違う。一緒くたにされることで困っているくらいだ。小泉氏から「あなたとは言っていることがだいたい同じだ」と言われたが、決して同じではない(笑)。

小泉氏であろうが、自民党が政権にある限りは、何も変わらない。というのは、自民党は高度経済成長期時代から続く既得権益の上に乗っているからだ。われわれが主張している改革というのは、その構造を変えることだから、自民党にとっては自殺行為に等しい。「自民党をぶっこわす」などと言葉は過激だが、自民党である小泉政権に自民党の存在を否定するような改革ができるわけがない。

では、小泉政権は何をやってきたのか。首相は「改革、改革」と言うが、実際にやっていることは官僚主導の経済財政政策にすぎない。かつての大蔵省流の財政支出削減を行っているだけだ。その典型例として補助金の削減だ。「三位一体の改革」というのも、地方への補助金を減らすということでしかなく、財務省が財布のひもを握っている構造は変わらない。今までの構造に手をつけず、歳出を減らすということであって、改革ということではない。

自由党が目指してきたのは、小手先の改革ではない。右肩上がりの時代が終わり、グローバリゼーションの時代を迎え、従来の枠組み、制度、やり方では通用しなくなった。この認識が重要だ。自由党が主張していることは、革命的改革だ。明治以来の行政の仕組み、経済の仕組み、社会の仕組みすべてを変えるからだ。

中央と地方との関係では、中央がおカネも権限も握り、地方におカネをバラ撒く仕組みを変えるべきだと主張してきた。地方にカネも権限も与えて、身の周りのことは地方の自主性に任せる方向に転換する必要がある。おカネと権限を地方に預ければ、おカネをどう有効に使うべきかを地方で考える人間が出てくる。そうなれば、地方でアイデアが生まれ、地方独自の経済活動が活発になってくる。

官と民の関係も改める。日本経済を活性化するためには「規制緩和」という中途半端なものではなく、「規制撤廃」が必要だ。民間の創意工夫に任せればいいではないか。かつては電電公社の独占だった電話も、電波の自由化で、携帯電話という巨大な市場を生むことができた。官僚たちは、一度握った権限はなかなか手放そうとしない。彼らから権限を奪うには政治の力が必要だ。官庁の権限の元になっている石油業法のような「業法」をすべて廃止すればいい。

役所が権限を握り、くだらないことをやっているから、日本経済はダメなんだ。民間や地方に任せれば、大きな経済活動を展開できる事業が官庁の中にたくさん眠っている。役所がそれを開放することを妨げている。たとえば、農政も保護が先行するが、今のやり方は農水省と農協の既得権を保護しているだけだ。リンゴであれ、ミカンであれ、本当は国際競争力を持つ農産物もある。元気な農家は、むしろ自由化を望んでいる。

一方、規制撤廃は、その過程において、軌道に乗るまではデフレ的効果をもたらし、日本経済を弱らせるかもしれない。それを補う意味での財政出動は否定しない。

今のような公共事業のやり方は根本的に改めなければいけない。しかし、日本は、社会資本の整備がまだ遅れている。三流か四流の国だ。たとえば、住宅の整備などを国家的なプロジェクトにして、豊かさをレベルアップさせるよう、まだまだ財政の役割は大きい。

ゾンビ企業は退場せよ

――銀行が支えているから生き残っている企業、競争力を失った企業は退場すべきか。

「ゾンビ企業」は市場から退出すべきだと思っている。日本の国民は変化を嫌うところがある。それは経済界も同じだ。国際競争力を持っている企業は別かもしれないが、官僚の庇護の下にある企業は特にそうだ。だから、できるだけ企業を存続させようとする。その典型例が金融だ。

銀行も行き詰まればつぶすしかない。かつての米国での貯蓄貸付組合(S&L)の問題では、20兆円の資金を投入してたくさんの貸付組合を整理した。資金投入の一方で、経営責任をきちんと追及し、約2000人が刑務所に入れられた。ところが、日本では、1998年に破綻した日本長期信用銀行や日本債券信用銀行は、3月に健全行と判定して国費を投入しておきながら、それから半年余りで債務超過となった。監督していた大蔵省に債務超過であることが分からないわけがない。公的資金投入を認めた当時の総理大臣以下、関係者は全員犯罪者だ。

このまま、処理を先送りすれば傷は深まり、処理コストはふくらむ一方だ。それにつれて、財政破綻の危機は高まっていくだろう。国の借金は約700兆円といわれるが、表の数字には出てこない隠れた借金まで含めると国民の全金融資産の総額と同等の1400兆円に近づいているのではないか。このままだと円の信用力は低下するし、ハイパーインフレの心配もある。ロシア金融危機の時、ルーブルの価値は1000分の1にまで下がってしまった。日本でも、このまま自民党と官僚に政権を任せていると、そういう事態が将来起こりえると思っている。まだ経済の余力がある今、円の価値がある今のうちに改革をやるべきだと言っている。

政権が変われば
権力構造も変わる

――都市部では、自民党に任せていてはもうダメだとする有権者が多い。

その認識は、農村地域でも同じだ。思ってはいるが、実際の投票となると、もう一歩踏み込めないというのが実情ではないか。しかし、それにはわれわれ野党にも責任があると思っている。自民党と同じくらいの力量があると思われていないからだ。

今回の民主党との合併は、その有権者の不安を吹き飛ばす狙いがある。今回の合併は、相互補完という意味合いが大きい。民主党は議員数が多い、大きな政党だが、昔の野党のようなイメージがあり、「本当に政権を運営できるのか」と政権担当能力に不安がもたれていた。しかし、自由党には、私らが政権を現実に支え、政権を担当した経験と理論がある。その二つが一緒になったから、安心感を有権者に抱かせることができたと考えている。

民主党との合併で、私は「一兵卒に徹する」と言っている。指揮系統、責任系統をスッキリさせるつもりだ。菅(直人)さんに「あなたが代表で、好きなようにやってくれ。俺は何でも協力する」と言っている。仲間内で争っているときではない。

ともかく現在は、政権交代が重要だ。確かに有権者の中には、われわれが政権を取った後が心配だとする向きがあるが、今の権力構造、経済構造、社会構造を変えるためには、それにどっぷり漬かっている自民党ではできない。その権力構造に組み込まれていないわれわれこそが、変えることができる。政権が変わることで権力構造そのものをガラリと変えることができる。

かつての新進党は本当は勝てたはずだった。だが、内部でゴタゴタがあり、イメージが低下し、総選挙では70議席が1万票以内の差で負けてしまった。その意味で、第1次の2大政党対決は失敗したと言える。今度は絶対成功させないといけないと思っている。日本を取り巻く環境が違っているし、国民の意識が以前とは違っている。「このままではいけない」というふうに意識が変わってきている。新しい民主党で国民の支持を得て、政権交代を実現し、真の改革を実行する国民本位の政府を打ち立てなければならない。
(構成=田中好伸・編集部)
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