米国に依存して経済成長してきた日本。「日米同盟」に配慮すれば、米国の意向に反対しづらい日本の事情もある。この先、日本は米国と対等の関係を築きながら、自立した経済を作り上げることができるのかどうか。日本は米国とどう付き合えばよいのかを、日米の通商交渉にも立ち会った民主党の前代表代行で衆議院議員の小沢一郎氏に聞いた。
――冷戦の崩壊、湾岸戦争、イラク戦争を経て日米の同盟関係は強化されていますが、どう評価されますか。
小沢 同盟関係というのは国同士が対等な関係であって初めて成り立つ。何でも操り人形のように言われるままに行動するのでは、同盟ではない。
冷戦の半世紀は、東西対立の中でそれなりの秩序と役割があったから、日本が自ら決断して発言したり、行動したりする必要はなかった。しかし、冷戦構造が崩壊して、各国の利害の対立や紛争が表面化し、それぞれが独自に行動できる余地が生まれた。その結果、経済的にはずうたいが大きくなった日本も、一定の政治的な行動を求められるようになった。自衛隊派遣など具体的な形で示さなければならなくなった分、自主性のない日本はよけいに、米国に対する『金魚のフン』ぶりが目立つようになった。
――経済分野は摩擦が少なくなり、ずいぶん変わったと思いますが。
小沢 日本が様々な規制緩和を進めたことが影響している。日本の官僚は規制緩和を決めた段階では、こんなに外資が参入するとは思っていなかっただろう。規制を緩和しても、得意の行政指導で国内産業は保護できると思っていたのではないか。しかし、大蔵不祥事などで役所の権威が失墜したことや経済のグローバル化の大波が官僚の思惑を打ち砕いた。加えて、90年代以降は国民の意識の変化もあった。民間企業も含めて、役所に指導を仰ぎ、判断を任せることに否定的な意識が強まった。その結果、米国が求める市場開放などがおのずと進んだ面がある。
――80年代後半の内閣官房副長官の時には建設や通信で日米交渉を経験されました。どんな米国観を持ちましたか。
小沢 それまで僕は外国人との付き合いはほとんどなかったが、対米交渉ではまず、日本人に対する米国の強烈な不信感を痛感した。『日本人はウソつきだ』と彼らは公然と言った。古くは日米繊維交渉が代表的だ。首相だった佐藤栄作さんは『前向きに検討します』と言った。日本では何もやらないという意味だが、米国はやると約束したと受け取った。大きなウソはあれからではないか。
日米交渉では不信感を解くのに一番苦労した。そうしないと、本題にも入れない。『私はウソをつかない』『米国の求めることでも筋の通らないことはやらない』『できることはあちゃんとやる』といくら言っても、信用してくれなかった。テレコム交渉の時は揚げ句に、『日本で使っている自動車電話を止めて、その電波をよこせ』と言ってきた。当然『そんなバカなことできるわけないだろう』と拒否した。それでも、最後の最後にようやく信じあえるようになって、関西で空いていた5メガの電波を携帯電話に使わせるという現実策で合意した。役人だけの交渉なら、多分決裂したと思う。そうなったら、日本の携帯電話の技術開発と普及は大幅に遅れていただろう。
「官僚まかせ」から脱却を
――とはいえ過去の対米交渉は日本が押し切られることが多かったと思います。妙案はありますか。
小沢 僕は日本は積極的に世界に立ち向かっていくべきだと思う。フリー、フェア、オープンな国にして、世界と競争する覚悟を決めなければならない時代になっている。嫌だ、嫌だと言いながらやられ放題になっている『官僚任せの政治』ではダメだ。
政府は自由貿易協定(FTA)交渉にしても、ちんたらやっているが、それではいけない。米国とも率先してFTAを結ぶべきだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)はじめ農産物の輸出国とのFTA締結は農業分野が障害と言われているが、反対しているのは生産者ではなく、役所と関係団体にすぎない。コメなどの基幹農産物については、不足払いの仕組みをキチンとつくり、所得の補償を担保してやれば生産者は反対しない。米国とFTAを結べば、日本は得るものの方がはるかに大きい。FTAを結ぼうと、日本が本気で提案したら、むしろ米国の方が恐れるだろう。
――現状は米系など外資系が日本での存在感を高めている。それを快く思わない気分もあると思う。
小沢 日本人の甘え意識が、極右ナショナリズムに変わってしまうことを憂慮している。米国や中国の知人にも話しているが、日本人は面と向かってはものを言わないけれども、我慢の限界を超すと、突然、極端に走る可能性がある。自由主義者の僕が右翼だと言われるうちはまだ大丈夫だが、偏狭なナショナリズムに火がつくと、どうしようもなくなる。米国に追随し続けて、米国の要求をのまされてばかりいると危険だ。だから早く、米国とは本当の意味で自立した対等の同盟国にならなければならない。
――アジアとの付き合いもますます重要になりませんか。
小沢 その通り。北東アジアは世界で一番不安定な地域だ。北朝鮮の行方もそうだが、中国は貧富の差が広がっていて、より心配だ。10年ぐらいのスパンで、北東アジアが混乱に陥らないように、日本は自分で判断して、中国にも言うべきことを言い、行動する必要がある。そのためにも中国、韓国、ASEANとも協力できる態勢をつくらなければならない。マレーシアのマハティール前首相が提唱した東アジア経済会議(EAEC)のような構想を実現できるよう努力してもよい。それに米国が反対したら、『きちっとした日米関係があるのだから心配するな』と言えるような日本にならないといけない。
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